[interview]サワディタイランド~増島実さん~

今回はリゾート写真家の増島実さんをお招きしました。増島さんはこの度、タイとバリの1泊100 ドル以下のお値打ちホテル52軒を紹介したガイドブック、『$100で泊まれる夢のアジアンリゾート』(文藝春秋刊)を出版されたばかりです。

編集部 『$100で泊まれる夢のアジアンリゾート』を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
増島 五つ星ホテルの取材でタイやバリに行くと、近くに小ぎれいなホテルが建っていることがよくあるんです。立ち寄ってパンフレットを見せてもらうと、1泊80~90ドルと格安。ところが、日本のガイドブックにはまったく紹介されていない。そんなホテルがすごく多いので、取材して1冊にまとめたら面白いんじゃないか以前から思ってたんです。%E8%A0%85%E6%80%9C%E3%82%A6%E3%82%AB%E7%B8%B2%C2%80%E8%9E%B3%E6%BA%98%C2%80%C2%80500K%E7%B8%B2%C2%80%E9%AC%98%E6%B3%8C%E3%83%BB%E9%80%B5%E3%83%BB%E8%A0%85%E6%80%9C%E3%82%A6%E3%82%AB%E7%B8%B2%C2%80%E8%9E%B3%E6%BA%98%C2%80%C2%80%E9%AC%98%E6%B3%8C%E3%83%BB%E9%80%B5%E3%83%BB.jpg

 それから、この2、3年の傾向として、ヴィラタイプや全室スイートといった超高級ホテルはたくさん出来て、雑誌にもよく取り上げられますが、その下のカテゴリーの情報がまったくない。旅行会社のパンフレットを見ても、100 ドル以下のホテルはどこも掲載してくれません。だったら、僕が紹介しようじゃないか。そう思ったのがきっかけですね。

編集部 本のなかでは、タイの素敵なホテルも数多く紹介されていますね。
増島 最近、タイの経済が好調なためでしょうか、ヨーロッパやオーストラリアといった先進国で修行を積んだタイ人ホテルマネジャーやアーキテクチャーデザイナーが母国に戻り、面白いブティックリゾート造りに貢献しているんです。客室数が20室程度の小さなホテルがほとんどですが、発想が自由で、色の使い方がうまい。そんな新しいタイプのブティックホテルをこの本では積極的に取り上げています。

編集部 写真を拝見すると、とても100 ドル以下とは思えない素晴らしいホテルばかりですが、選ぶ基準は何かあったのですか?
増島 「$100リゾートの五箇条」を作り、それに合致するホテルだけを選びました。1、宿泊は1泊100 ドル以下。2、ロケーションが抜群。3、室内は清潔でセンスがよい。4、美味しい食事が食べられる。5、暖かいもてなしがある。なかでも重視したのは清潔さです。まずホテルに着くと、客室を見せてもらい、床がきれいかどうかをチェックします。具体的には裸足で歩いて、足の裏に汚れがつくようなホテルはNGです。施設としては、プール、レストラン、スパの三つのうち、二つを満たせば経営的に前向きだと判断しました。本当は三つ揃うのがベストですが、そうすると残念ながら100 ドルを超えてしまうケースが多いんです。

編集部 本書では南のホアヒン、プーケット、サムイから、北のチェンマイ、チェンライまで、タイ全土から27軒のリゾートホテルを選んでいます。増島さんのオススメのホテルを教えてください。
増島 サムイでは「ザゼン・ブティック・リゾート&スパ」がいいですね。レストランの質もいいし、デザインも素晴らしい。立地もオン・ザ・ビーチで絶好のロケーションですし、スタッフの応対も五つ星級です。tahi3.jpg
ホアヒンなら「プタラクサ・ホアヒン」という出来たばかりのホテルがオススメです。インテリアも施設も素晴らしいし、いまならオープン価格で格安で泊まれるのでオトクです。
 チェンマイでは、「ティー・バナ」というブティックホテルが個性的で面白い。その名を通り、チェンマイ産の紅茶をレストランで出してくれます。また客室のデザインも黄色だったりブルーだったり、それぞれ違うんです。市内の中心部にあるので、観光にも便利ですね。
 チェンライでは、ちょっと変わった「ナーガヒル」というホテルを推薦します。一泊17ドルと大変安いんですが、プールやレストランもちゃんとあり、ほかのホテルと比べても遜色ありません。客室はタイの東屋風で簡素なんですが、モスキートネットがあって、泊まり心地は良かったですよ。

編集部 取材で苦労したことはありますか?
増島 現地に実際に行って期待はずれだったホテルが何軒かあって、掲載を断わるのが大変でしたね。タイでは客室に匂いのする消臭スプレーをかけるホテルが多いんですが、そういうホテルの中にはジメジメとして換気が悪く、日本人にはちょっと推薦できない所もありました。

編集部 取材での笑い話、仰天エピソードは何かありますか?
増島 タイ北部のとあるホテルで、ベッドで寝ていたんです。すると、天井からバサッと大きな音とともに何かが落ちてきたんです。何だと思って見たら、体長50㎝くらいの緑色をした大トカゲ(笑) 。それも背中に恐竜みたいなトゲトゲがついたヤツ。私もびっくりしてベッドから飛び上がりましたが、向うもずいぶん驚いたみたいで、部屋中を走り回っていましたよ(笑)。まあ、それだけ自然環境が恵まれているってことです。

編集部 どれもうっとりするような素晴らしい写真ばかりですが、ホテルを上手に撮影するコツは何かありますか?

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増島 まず建物ですが、柱をまっすぐに撮ること。柱を地面と垂直に撮ると、建物はきれいに見えます。ところが、これが結構難しい。まっすぐに撮ったつもりでも、必ず右か左に傾いています。それから、朝夕の光を利用するといいです。斜光といいますが、この時間の光は部屋の奥まで入ってくるので、モスキートキットやベッドの天蓋など、意外なものが映り込んで、面白い写真になります。サンセットのときは、どうしても皆さん夕陽に目が向いてしまう。それで夕陽にばかりシャッターを切っていますが、夕陽に背を向けて反対側を撮ると、意外と面白い写真が撮れると思います。


編集部 増島さんはタイにはよく行かれるのですか?
増島 年に 4、5 回は行きます。今までに50回以上は訪れていると思います。

編集部 初めてタイに行ったのはいつですか?
増島 1970年、まだ大学生の時ですね。バンコクで開かれたアジア大会に、新聞社のカメラマンのアシスタントとして行ったのが最初です。私の父が新聞社に勤めていて、その紹介で行ったんですが、現地ではフィルムの現像や電送の手伝いをしていました。なにしろ初めての海外旅行でしたから、見るもの聞くものすべて強く印象に残っています。意外とフリータイムが多かったので、アユタヤなどにも足を伸ばして観光しました。当時のバンコクは「東洋のベニス」といわれるほど街中に運河が張りめぐらされていて、水上マーケットがすごく賑わっていたのを覚えています。

編集部 タイの中でお好きな所はどこですか?
増島 街だったら、プーケット島のプーケット・タウンかな。アジアのコロニアル建築が好きなんですが、幸運にもタイは列強に支配されなかったので、コロニアルなものがほとんどないんです。唯一あるのが、このプーケット・タウンのチノポルチュギーズ建築。中国・ポルトガル様式の二階建ての建物が残っています。最近では文化遺産として保存しようという動きが出てきて、この本でも取り上げましたが、改装してホテルとして使われたりしています。
 ビーチでは、サムイ島のチェウエンビーチ。4㎞ほどのおだやかなビーチですが、水がものすごく澄んでいるんです。海に入ると、自分の足が透けて見えますよ。特に3月から5月の間は、まるで鏡のように穏やかです。まさに、これぞ楽園という感じですね。thai2.jpg


編集部 増島さんのお気に入りのホテルはどこですか?
増島 たくさんありますが、あえて一つあげるとすれば、サムイ島の「トンサイベイ」ですね。もう何回も訪れていますから、自分の家に帰ったような気がします。朝、レストランに行けば顔なじみのオバチャンがジュースをしぼってくれて、「あんた、また来たの」って言ってくれる(笑)。スタッフの質が高いんです。おせっかいなことはしない代わりに、求められれば適切なアドバイスをちゃんとしてくれる。そんなマニュアルにないサービスが魅力ですね。あと、ここのスパが最高です。潮騒を聞きながらトリートメントを受けると、ホント、よく眠れますよ(笑)。

編集部 タイで好きな食べ物は何ですか?
増島 月並みですが、「バーミー」。ラーメンですね。特にエッグヌードルが好みです。体調がいま一つのときには、「パカパオ・プラバオ・カイダオ」を頼みます。肉と野菜を醤油で炒めたものに、ご飯の上に目玉焼きをのせたものがつく典型的な屋台料理です。これを食べるとシャキッとして、「よし、一発仕事をやろう」という気になりますね。

編集部 増島さんにとってタイの魅力は何でしょう?
増島 タイの場合、ビーチに行くと寝ながらにしてすべてがまかなえるんです。焼きトウモロコシも売りに来るし、Tシャツからタトゥーまで何でも売りに来てくれる。とてもラクチン。これが他のアジアの国だとそうはいかない。買わないと物売りがしつこくつきまとう。ところがタイの場合、要らないというとすぐに向うへ行っちゃう。タイ人のそんなおおらかな気質が、僕はとても好きですね。


(増島実プロフィール)
1948年東京生まれ。リゾート写真家。祖父、父とも写真家の環境に育つ。東京工芸大学工学部画像工学科卒。70年代より「non-no」「MORE」「るるぶ」「SPUR」などの旅行ページを手がける。80年代取材で訪れたタヒチに魅了され、それ以来30回を超える再訪を果たす。また80年代後半から始まったアジアンリゾートの隆盛に伴い、アジア各国のリゾートを取材する。


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『$100で泊まれる夢のアジアンリゾート』
写真・増島実 文・桑野貴子/鈴木さちこ
文藝春秋刊  1890 円

2007年05月02日
 

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